近年の異常な酷暑。それも7月~9月までの3ヶ月間はほぼ毎日が猛暑日です。
気象庁からは昼間の運動は控えるようにという熱中症警戒アラートが毎日のように叫ばれていましたね。
熱中症で緊急搬送されないまでも、軽い熱中症にかかりながら苦行ゴルフをしている方は多いのではないでしょうか?
ゴルフ場とて同じこと。お客様の予約が減少し経営を圧迫しかねません。
そんな情勢を鑑み、7月下旬に私の所属するJGJA日本ゴルフジャーナリスト協会では「ナイターゴルフ勉強会」が開催されました。
場所は千葉県市原市にあるムーンレイクゴルフクラブ市原コースです。
事前にLED照明を製造・販売している株式会社スリーエスの櫻木邦善会長と同コースを運営するPGMの滝口和祐支配人、PGMマーケティング部マーケティンググループの須賀隆グループ長から講義があり、その後ナイターゴルフを体験するという流れでした。
実際に体験したナイターゴルフの詳細はこちらに掲載しました。
⇒ナイターゴルフの楽しみ方。ムーンレイクゴルフクラブ 市原コースの攻略法
今回はナイターゴルフの照明について株式会社スリーエス様にお話しを伺いましたので詳細にレポートしようと思います。
Contents
ナイターゴルフの現状
2023年現在、全国にゴルフ場は2,123コース※ありますが、18ホールすべてにナイター設備が設置されているゴルフ場は15コースしかありません。※「ゴルフ特信」調べ
ナイター設備設置ゴルフ場(ショートコース含まず)
どうして、ナイターゴルフができるコースがこんなに少ないのでしょう。
理由として挙げられるのは
- コストの問題(これは後述します)
- 場所の問題
<東京駅を起点とした場合の平日午後の所要時間>
この図にあるピンを立てた場所は現在、ナイターゴルフを営業しているコースです。
見てみると、都市圏からのアクセスが良いコースが多いことがわかります。
集客数が見込めないとイニシャルコストを回収できないと思っているのかも知れません。
しかし、PGMは千葉県の4コースでナイターゴルフを展開。全国では8コースです。
おそらく、最初に設置したコースで採算が合うと判断して増やしていったんでしょう。年内にあと2コース増やし、今後も拡大する見込みだそうです。
一般ゴルフ場でも都市部から車で1時間前後で行けるコースはもっと数多くあります。課題がクリアーになるのなら検討してはいかがでしょう。
オペレーションの問題
従業員の数、勤務時間、メンテナンス時間の制限、等々マンパワーの問題もありそうです。
また、クラブハウスのレイアウトも関係するでしょう。
ムーンレイクGC市原コースの場合、受付(事前精算)が終わると、1階と地下のシャッターが降りて立ち入りできないようになり、地下にあるロッカー、浴室のみプレーヤーは使用し、地下の階段から退出となります。
考え方の問題
「そもそもゴルフは昼間にプレーするものだ。ナイターゴルフなんて誰がやるものか!」という昭和感覚の経営者の問題。
ゴルフ場はあれだけ広大な施設でありながら、最終スタートは14時からのハーフが限界。
稼働しているのは10時間くらいですよね。アーリ-バードで二毛作をやっているのなら、ナイターで三毛作もありなのでは?
ムーンレイクGC市原コースの支配人によると、最終スタートは20時。
スループレーで24:30まで入浴できるそうです。
予約は昼間より夜(後ろのスタート時間)から埋まり、昼間に空きはあってもナイターは満杯。毎日60組もいるんですって。
経営者は利益を重視するでしょうから、そこまで利益が見込めるなら重い腰も上がるんじゃないですか?
ナイターゴルフのメリット
あらためてナイターゴルフのメリットを列挙してみようと思います。
①猛暑を避けられて涼しい環境でラウンドできる。
熱中症の心配がないのは嬉しいですね。
私達がプレーした日の市原市の最高気温は39.0℃というヤバい暑さでした。
しかし、日没後はゴルフ場に涼やかな風が吹き、とても快適な気温でプレーできました。
②仕事帰りでもゴルフができる。
都市部(県庁所在地)から1時間程度で来場できるゴルフ場であれば、仕事終わりに車を飛ばせば19時からのラウンドは楽勝!
早退すれば16時からラウンドできますよね。
ゴルフ場にホテルが併設しているのであれば、プレー後の宿泊客も見込めます。
ムーンレイクGC市原コースの場合、若いカップルの利用客が多く、10~30代が37%、女性比率も昼間は15%なのにナイターは19%と高くなるそうです。
③技術がアップする。
ナイターゴルフは球をしっかり見てショットする技術が身に着きます。
また、フェアウェイをキープしないと球を見失うので心理的にコントロールショットすることになります。
パッティングもしかり。
LED照明はアンジュレーションを見やすくするので、起伏がよく見えます。スキー場のナイターと同じ理屈です。
④カップルゴルフに最高の舞台。
ナイターゴルフはロマンチックです。虫の声、飛行機のライト、月、夕暮れのコースの美しさがムードを演出してくれます。
また、女性に大敵の日焼けの心配もまったく無し。蚊にも刺されませんでした。
特に「光るボール」を使えば、さらに雰囲気を盛り上げてくれます。
このボールはショットした時の衝撃で5分間光ります。
弾道が花火のようにキレイ。もし、光源が届かないような深い茂みに入っても、たちどころに見つかるのでロストボールもありません。
ムーンレイクGCではShopで販売していますが、飛ぶように売れるそうです。
水銀灯とLED照明の違い
ここでテクニカルなお話しをしましょう。
ナイターというと照明は水銀灯で光の端は暗いのでは?とイメージしている方もいるかもしれませんが、いまはそんな時代ではありません。
まず、水銀灯は2020年から輸出入が禁止。製造、販売が中止になったということです。
これは水銀や水銀を含む化合物の人為的な排出から人の健康被害や環境汚染を保護する目的で定められた国際条約で「水俣条約」と呼ばれています。
現在使用中の水銀灯の使用は禁止されていませんが、寿命や故障したらLED照明に乗換えないとNGです。
そこで、水銀灯と一般のLED照明、そして(株)スリーエスが開発した「アルカスNSD」というLED照明の性能の差を比較してみましょう。
この表を見ると性能の差が明らかですね。
LED照明は、経済面・性能面・環境面、全てにおいて水銀灯よりも優れた光源だとわかります。もちろん、水銀灯からLED照明に変換するときにコストがかかります。
しかし、使用電気代が安く済みますので、それもすぐにペイできます。
同じコースの水銀灯とLED照明の電気代の比較です。
なんと、およそ1/4になるんですね。
ムーンレイクGC市原コースでは同じ18ホールを照らすのにメタルハライド灯(いわゆる水銀灯)からLED照明に交換したところ、電力が半分以下になりました。
自社開発したデュアルレンズLED照明は何が違う?
前項で水銀灯とLED照明の違いを数値で表しましたが、写真で見ると明るさの差が歴然です。
Before写真では、フェアウェイでも球を見失いそうなくらい暗いです。
私がムーンレイクGC市原コースでプレーする前のイメージはこの暗さでした。
ところが実際にラウンドしてみるとフェアウェイの端にあるクロスバンカーでも写真のような明るさです。
光の届く範囲について比較図がありますのでご覧ください。
この図を見ると、ホールの端にまで明るく照らすことができていることに納得ですね。
さらに、アルカスNSDは一般のLEDより少ない電力で効率よく照射できるそうです。
ところで、北海道日本ハムファイターズの2軍グランド、千葉県・鎌ヶ谷球場にはナイター設備がありません。
それは周辺に梨畑が広がるため。梨はナイター照明が当たると生育に影響するんですって。
ゴルフ場にも隣接する住宅がある場合があります。これを「光公害」と言います。
実はLEDにも有効光束(対象物を照らす光)と無効光束(目的物以外にも届いてしまう光)があり、どれだけ無効光束を減らすかがテーマでした。
(株)スリーエスでは独自のデュアルレンズを開発。通常50%程度の有効光束を86%に上げたことにより、周辺の畑や住宅へ配慮できるようになりました。
このデュアルレンズ方式により照射対象から光を漏らしません。
(光が漏れる量は1ルックス以下)
LED照明の設置コストと回収
ここまで読まれた方はLED照明は素晴らしいからもっとナイターゴルフが普及すればとお思いですよね。しかし、ゴルフ場が躊躇するのはコストの問題です。
新たに支柱を建て、18ホール分のLED照明を設置するのに約4~4.5億円。(支柱は100本程度。1本の支柱に照明器具を4台乗せるそうです)
すでに水銀灯で営業していて、その支柱を活かして照明部分だけを替えても約1~1.5億円かかるそうです。
が、この場合は電気代が半額以下になるので、数年でペイできます。
上がり3ホール(計6ホール)に薄暮対策として設置する場合、3~3.5千万で済むそうです。
ゴルフ人口が減少している中、新規の設備投資で4億円は経営側も慎重になりますよね。
しかし、減少しているゴルフ人口は団塊の世代。コロナ禍後、じわじわと増えてきている若年層や女性を対象とするならば、この投資は周辺ゴルフ場を出し抜く一手となるはずです。
ムーンレイクGC市原コースのナイターを利用する年齢層は10~30代37%、40~50代は41%、60代以降は22%しかいません。
しかも毎日、ナイターの60組がほぼ満杯。
そして昼間よりも高い料金が設定できるのです。(株)スリーエスの試算によると5年以内で投資資金の回収ができます。
なお、(株)スリーエスには「リース契約」があります。
初期投資ゼロで契約期間も選択できるそうです。「お試し」で上がり3ホールだけ設置するとか、アリじゃないですか?
夏のすべての屋外スポーツに快適環境を
(株)スリーエスの櫻木会長はゴルフのみならず、夏のすべての屋外スポーツをナイターにして熱中症のリスクから開放させてあげたいと夢を抱いています。
HPにはゴルフ場以外にサッカー場、テニスコート、野球場などのビフォーアフター事例を見ることができます。
比較すると一目瞭然!プレー環境がかなり改善されています。
櫻木会長は自社の提携会社の事例をお話ししてくれました。
韓国全土でゴルフ場は600コース。そのうちナイターを導入しているのは100コースほど。韓国のほうがナイター環境が整ってますね。。
(株)スリーエスの提携会社が韓国でゴルフ場88コースにLED照明を設置しているそうです。
今年の夏も記録破りの猛暑でした。甲子園大会は試験的に昼間の試合を朝と夕方にシフトしました。
プロ野球は以前から平日はナイターがスタンダードですし、Jリーグも夏はナイトゲームが主流になります。
今回の勉強会を通じて、私は6月~9月のアウトドアスポーツはナイターがスタンダードになる日が必ず来ると予感しました。もう、苦行ゴルフはやめましょう。
株式会社スリーエス
公式ホームページ https://www.i-sss.jp/